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風立ちぬ

2013 年 8 月 15 日

2年ぶりのジブリ映画。

本題に入る前に、今夏の映画公開は宮崎駿と高畑勲の2枚看板、同時公開予定だった件について。

高畑監督はまあ、いつもどおり公開に間に合いませんごめんなさいって数ヶ月前に言ってるので放っとくとして。
ハヤオ的にはそろそろ自分のタブーとしていた領域までも削ってやらねば作品にならないところに来てる気がします。
彼個人の発言については一部で問題視する向きもあるようですが、今回の映画にはそんな思想微塵も出てこない。

さて。
いつものとおり、映画タイトルと設定や雰囲気だけを借りて中身はまったく別物。
「堀越次郎と堀辰雄に捧ぐ」とはいえ、伝記にもなんにもなりませんし、史実だけを追ったものでもない。
常に、フレームの中心は主人公の「次郎」という、これは非常に地味に、設計者の横顔を描いている。

描き方はかなり考えられていて、「あくまでも飛行機設計者としての次郎」を描くことを徹底している。
これはパンフに載ってた企画趣意からも明らかで、それをブレずに貫く、やはりハヤオはプロだし、
評価される理由だとおもう。

基点は少年の夢「美しい飛行機を造りたい」という部分。イタリアの設計者と夢の中を共有し、みちびきを得るシーンが
何箇所か入る。

「空を飛ぶという夢は、呪われた夢でもある」と、憧れだけを肯定するのではなく、その裏に存在する闇を示唆する。
これをきちんと示唆する大人・先輩というものは大事である。

まあ、この少年の場合、時代背景的に闇の部分しかなかったわけですが。

それがゆへに、場面場面の切り替わりが早く、淡々と進んだ印象。
幼少から青年期、就職して仕事を始めるまでの進み方がかなりテンポよく、ともすれば置いていかれてしまうぐらい。

以降はなんとなく、明確な成功・失敗を語られることなく進む。
それどころか、日本という国がおかれている状況の説明すらない。
確かに軍需産業だが、それを表立って描くことはされない。
それはいくらなんでも、子供向け映画にはふさわしくはないだろう。

そして、大人はついていけても、こどもには分からない描写はいくつも出てくる。
結婚式や初夜のシーンなど、こともには分かるわけもない。

ただ、それを今回は思い切って善しとする判断のもと、この映画は作られているとすれば。
狙い通りのところへ落ちついたと言える。

 

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